白いブラインド越しに光が入る窓辺。木のサイドテーブルに、濃紺のデニムの二つ折り財布と、細い金属の眼鏡が置いてある。斜め上から

デニムの生地は、なぜ一種類ではないのか

デニムと呼ばれる布を何枚か並べてみると、同じ名前の布とは思えないことがあります。厚みが違う。幅が違う。指で挟んだときの張りも違います。

違いのいくらかは、糸の段階で決まっています。けれど残りは、そのあとの工程で決まります。布を織るところです。

織るというのは、縦に張った糸のあいだへ、横の糸を一本ずつ通していく作業です。動作そのものは単純ですが、この「通す」を何がやるのかで、出てくる布が変わります。

明るい木の床に置いた、濃紺のデニムのサコッシュ。黒いテープの肩紐が弧を描き、金色の金具とファスナーが付いている。斜め上から

横の糸を、何が運ぶのか

横の糸を向こう側へ運ぶ道具には、いくつかの種類があります。

剣のような細長い部品でつかんで運ぶもの。空気を噴きつけて飛ばすもの。弾のような部品に持たせて走らせるもの。順に、レピア、エアジェット、プロジェクタイルと呼ばれています。

運び方が違えば、運べる糸も変わります。剣で運ぶ機械は、固い糸や、伸びない糸を通すことができます。弾で運ぶ機械は、太い糸を使った厚い生地に向いています。同じ剣の形でも、速く動く型のほうは、細い糸のための機械です。

太い糸の厚い生地と、細い糸の生地とでは、そもそも動かす機械が違う。一台でどんな布でも織れるわけではない、ということです。だから織り場では、織る布に合わせて、機械を使い分けます。

濃紺のデニムの生地の寄りを二つ並べた写真。左は白い粒が細かく詰まり、面に濃淡のムラがある。右は粒が大きく間隔が広く、面が均一。別々の商品の生地を、それぞれ撮った写真を並べている
左は目が細かく、面に濃淡があります。右は目が粗く、面が均一です。別々の商品の生地を、それぞれ撮った写真を並べています。

どこまでの幅を織れるか

機械によって変わるものが、もう一つあります。布の幅です。

古い形の機械には、幅の限りがありました。29インチ、約73センチまで。織る速さも、1時間に5メートルほどです。

いまの機械は、それより広い幅を、速く織ることができます。

平らに織るだけではない

織り方そのものを変える機械もあります。

柄を織り出すジャガードという機械があります。ドビーという機械は、変わり織りや二重織りを織ることができます。

井原は岡山県、福山は県境をまたいだ西どなりで、広島県です。どちらも、瀬戸内のひとつづきの土地にあります。

井原では、柄のある布や、染め方の違う布がつくられてきました。福山では、綿のほかの糸を使ったデニムも織られています。

デニムは無地の綿の布だ、という思い込みが、このあたりで少し崩れます。

古い機械も、新しい機械も

この土地には、古い機械と新しい機械が、並んで置かれています。

古い機械を新しい機械に入れ替えたのではなく、両方が動いています。

濃紺のデニムの名刺入れの面の寄り。白い横糸の粒が細かく並び、左上にベージュのラベルの角と白い縫い目、右下にオレンジの縫い目の端が見える

織る道具が違えば、織れる布も違ってきます。並べたデニムの厚みも、幅も、手ざわりも違うのは、その一枚ずつが、違う道具をくぐってきたからです。

ショルダーバッグ ― 肩から提げて持つ形。

二つ折り財布 ― 二つに折って持つ形。

名刺入れ ― 名刺をまとめて持つ形。

使うほど、味になる。

ブログに戻る