デニムの色は、なぜ移るのか

おろしたてのジーンズをはいた日に、白いスニーカーの縁がうっすら青くなっていた。あるいは、淡い色の椅子に座ったあとが気になった。

デニムを使っていて、いちばん最初に戸惑うのがこれだと思います。

藍は、糸の表面に留まっている

デニムを青くしている藍は、繊維の内部にしっかり入り込む種類の染料ではありません。糸の外側に、細かい粒として乗っている。前回の記事で書いた「中白」——糸の芯が白いまま残るという話は、裏返せば「色は表面にある」ということでもあります。

表面にあるものは、こすれれば取れます。取れた粒が、触れているものに移る。これが色移りです。

移りやすくなる条件は、だいたい決まっています。ひとつは、新しいうち。表面に乗っている量がいちばん多い時期だからです。もうひとつは、湿っているとき。雨に濡れたり、汗をかいたりすると、乾いているときより粒が動きやすくなります。

だから、白いスニーカー、淡い色の鞄、車のシート、明るい色のソファ。そういうものと、濡れた状態で長く触れ合うと起きやすい。逆に、乾いた状態で軽く触れる程度なら、そこまで神経質になる場面ではありません。

付き合い方のこと

一般には、次のような扱いが知られています。

使いはじめの何回かは、ほかのものと分けて洗う。濡れたまま、淡い色のものと重ねて置いたままにしない。もし移ってしまったら、時間を置かずに洗う——時間が経つほど落ちにくくなるためです。

小物の場合は、気をつける場面がジーンズとは少し違います。財布なら、明るい色の鞄の内側。パスケースなら、中に入れたカードの白い面。肩から下げるものなら、夏の白いシャツ。どれも「濡れているとき」ではなく、「ずっと触れ続けているとき」に起きます。長時間、同じ場所が密着しているという条件が、湿り気の代わりをするからです。

気になるなら、使いはじめの何日かだけ、淡い色のものと重ねないようにしておく。それだけで、たいていの場面は避けられます。

もうひとつ、覚えておくと気が楽になることがあります。色移りは、色落ちと同じ現象の裏側だということです。表面の粒が離れていくから色が移り、離れていくから、使ううちにその生地は自分だけの表情になっていく。片方だけを止めることはできません。

避けたい人は、濃い色のものと合わせる。育てたい人は、気にせず使う。どちらを選ぶかは、持ち主が決めることです。

先に言っておきたいこと

私たちの小物は、瀬戸内・三備地方の生地を使っています。デニムの産地として知られる場所で、デザイナー自身が現地に足を運んで選んだものです。藍で染められた生地なので、ここまで書いてきたことは、そのまま当てはまります。

こういうことは、買ったあとに知るより、買う前に知っておいたほうがいいと考えています。私たちは返品の決まりの中でも、革の傷やしわは不具合ではないということを、あらかじめ書いています。素材が持っている性質を、あとから「そういうものです」と説明するのは、順番が違うと思うからです。

デニムは、扱いにくい素材です。色が移り、色が落ち、形が変わる。そのかわり、同じ顔のものが二つとありません。

使うほど、味になる。

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